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メキシコのバイク市場は日本の約5倍? Italikaから見る「働くための二輪市場」

8月29日
読了時間: 7分

更新日:9月5日

筆者は、どちらかといえばHonda派だ。


理由は性能比較をした結果でも、レースが好きだからでもない。小学生の頃、本田宗一郎の人生を描いた学習漫画のような本を、たまたま読んだからだ。それ以来なんとなくHondaという会社が好きになり、高校生の頃にはブルーメタリックのHonda Zoomer DXに乗っていた。


その後、長いことバイクから離れていたが、メキシコでの生活スタイルが少し変わったことをきっかけに、最近またバイクを探し始めた。


中古車を中心に見ていると、Honda CG系やYamaha YBR、Italikaなど、日本にいた頃とは違う二輪市場が見えてくる。


メキシコでは、とにかくバイクをよく見る。もちろん趣味や通勤で乗る人もいるが、配送、商売、移動、荷物運搬など、「仕事をするための道具」として使われている車両が非常に目立つ。調べてみると、これは単なる印象ではなかった。


メキシコでは年間200万台規模のバイクが売れる

業界データによると、メキシコの二輪市場は2025年に年間200万台を突破したとされる。一方、日本の二輪車需要は近年30万台後半で推移している。統計の定義が完全に同じではないため単純比較には注意が必要だが、新車市場の勢いだけを見れば、現在のメキシコは日本の約5倍という規模感になる。


保有台数を見ると、メキシコでは2024年に約895万台のオートバイが登録されている。一方、日本の二輪車保有台数は約1,028万台。ストックでは日本も依然大きいが、新しく市場へ入ってくる台数ではメキシコの勢いが目立つ。


つまりメキシコは単に「バイクが多い国」なのではなく、現在も二輪市場そのものが拡大している国として見ることができる。


巨大市場で圧倒的な存在感を持つItalika

そのメキシコ市場で独特のポジションを築いているのが、メキシコブランドのItalikaだ。

Grupo Elektraの2025年資料では、Italikaのメキシコ市場シェアは約55%。2004年に誕生した比較的新しいブランドだが、すでにメキシコの街ではHonda、Yamaha、Suzukiなどの日本ブランド以上に日常的に目にする存在になっている。


そして2026年、Italikaは新型300Zを投入した。


注目したいのは排気量や馬力だけではない。同社はメキシコで生産する新しいプラットフォームを導入し、今後は自社開発と知的財産を増やしながら、中国由来のプラットフォームへの依存を段階的に減らす方向を示している。


これは「メキシコブランドのバイクを海外由来のプラットフォームで組み立てる」段階から、より多くの価値をメキシコ国内で生み出そうとする動きとして興味深い。


メキシコのバイクは「移動手段」であり「生産設備」

なぜこれほどバイクが売れるのだろうか。価格、都市部の渋滞、公共交通、配送サービスの成長など、理由は一つではない。ただ、メキシコで暮らしていて強く感じるのは、バイクが単なる趣味の商品ではないことだ。


小規模な商売をする人にとって、比較的低い初期費用で購入でき、燃料費を抑えながら人や物を運べるバイクは、その人が収入を得るための「生産設備」に近い。中古市場を見ていても、カーゴキャリアを装着した車両や、日本では馴染みの薄い実用性重視のモデルに頻繁に出会う。


ここで面白いのが、日本企業が海外で販売している商品は、日本人が日本国内で知っているラインナップと必ずしも同じではないということだ。


筆者自身、メキシコで中古バイクを探し始めてから、Hondaにもラテンアメリカ市場で仕事用途を強く意識したモデルが存在することを改めて知った。


Automechanikaで聞いた、日本企業が見るメキシコ市場

この市場を考えるうえで、完成車だけでなくアフターマーケットも重要だ。


筆者は2026年にメキシコで開催されたAutomechanikaを訪れ、日本の自動車部品メーカーKYBの担当者に話を聞く機会があった。KYBはショックアブソーバーを製造し、日本車・欧州車のOEMにも供給する企業だ。

メキシコ人担当者が強調していたのは、道路事情と車両の使われ方だった。メキシコでは路面状況によってサスペンションが大きな負荷を受けるうえ、車両を仕事に使う人も多い。そのため、耐久性のあるショックアブソーバーやサスペンションは安全面でも重要になるという。


さらに日本人担当者から聞いた話も興味深かった。メキシコ市場は大きい一方、近年は中国や韓国などから入る低価格製品との価格競争が強くなっているという。


以前は高品質ブランド同士の競争が中心だったが、市場環境が変化し、現在は価格の安い輸入製品に対して、高品質という価値をどう伝えながらシェアを広げるかが課題になっているとのことだった。


これはメキシコ市場を見る日本企業にとって重要なポイントだと思う。「市場が大きいから売れる」わけではない。市場規模が大きいからこそ競合も集まり、特に価格では中国系ブランドとの競争を避けにくい。日本企業が参入するなら、耐久性、安全性、品質管理、業務用途での総保有コストなど、価格以外の価値を明確にする必要がある。



面白いのは「バイク本体」だけではない

約900万台のバイクがすでに走り、年間200万台規模の新車が市場に入ってくるのであれば、その周囲では交換部品やメンテナンス用品、アクセサリーも必要になる。タイヤ、ブレーキ、サスペンション、ライト、ミラー、キャリア、収納、安全用品、工具、消耗品などだ。


バイクが仕事道具なら、「壊れたのでしばらく乗らない」という選択が難しいユーザーもいる。完成車メーカーだけを見ていると気づきにくいが、巨大なモビリティ市場の周囲には、それを維持するアフターマーケットが存在する。


日本企業にチャンスはあるのか

もちろん、「メキシコでバイクが売れている=日本製品なら売れる」というほど単純ではない。価格競争は激しく、中国をはじめとするアジア企業も強い。メキシコの所得水準や用途に合わない商品を日本価格のまま持ってきても難しいだろう。


一方で、日本企業が必ずしも完成車で勝負する必要もない。業務用アクセサリー、耐久性の高い交換部品、収納、メンテナンス用品、安全用品、特殊工具など、メキシコで実際にどうバイクが使われているかを細かく見れば、日本の中小メーカーが得意とするニッチが存在する可能性はある。


さらにItalikaが海外由来プラットフォームへの依存を減らし、メキシコ国内での開発や知的財産を増やそうとしているなら、将来的には部品、素材、製造設備、品質管理などB2B側にも新しい需要が生まれる可能性がある。ここは今後も追っていきたい。


街で見ていたバイクを「市場」として見る

筆者自身はというと、今のところHondaを中心にバイクを探している。小学生の頃に本田宗一郎の漫画を読んだ影響は、思った以上に長く続いているらしい。


ただ、メキシコでバイクを探し始めたことで、単に「どのバイクを買おうか」だけではなく、その背後に想像以上に大きな市場が存在することに気づいた。街で毎日見ていたバイクも、市場として見ると少し違って見えてくる。


メキシコの二輪市場は、完成車だけでなく、その周囲にある部品、サービス、製造、物流まで含めて、日本企業にとって一度詳しく調べてみる価値のある市場ではないだろうか。


メキシコ市場への参入を考えるとき

販売台数や市場シェアだけでは分からないことも多い。実際にどんなバイクが走っているのか。仕事ではどう使われているのか。どんな部品が交換され、どの商品なら価格差があっても選ばれるのか。販売店や整備店では、何が売られているのか。こうした部分は、現地を実際に見て初めて分かることもある。


TokyoTacosでは、日本企業向けにメキシコでの現地リサーチ、店舗・展示会・競合調査、販売店や事業者へのヒアリング、撮影・取材、現地パートナー候補の調査などを行っている。

特に二輪・自動車部品、アクセサリー、工具、メンテナンス用品などで、「自社の商品にメキシコ市場の可能性はあるのか」「まず現地の使われ方を確認したい」という段階であれば、いきなり大規模な市場調査をする前に、現地で小さく仮説を検証することもできる。


市場規模を見るだけでなく、実際にその商品を使う人、売る店、競合商品まで見に行く。メキシコ市場を検討する最初の一歩として、そうした現地調査からTokyoTacosに相談してもらえればと思う。


参考資料・出典

本記事の市場規模・販売台数・企業動向等は、以下の公表資料・業界資料を参照しています。KYBに関する記述は、2026年Automechanika MexicoでTokyo Tacosが担当者へ行った現地インタビューに基づきます。


INEGI / Cámara de Diputados — メキシコの登録二輪車数(2024年:約895万台) https://gaceta.diputados.gob.mx/Gaceta/66/2025/dic/20251209-III-1.html


日本自動車工業会(JAMA)— 日本の二輪車市場・保有台数 https://www.jama.or.jp/statistics/facts/two_wheeled/index.html


MotorCyclesData — Mexico Motorcycles Market(2025年の販売動向) https://www.motorcyclesdata.com/2026/06/23/mexico-motorcycles/


Grupo Elektra — 2025年1Q 投資家資料(Italikaの市場シェア等) https://www.grupoelektra.com.mx/Documents/ES/Downloads/GrupoElektra1T25Esp.pdf


El Universal — Italika 300Zとメキシコ国内生産・プラットフォーム戦略 https://www.eluniversal.com.mx/autopistas/italika-300z-la-primer-motocicleta-de-la-marca-fabricada-en-mexico/


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