メキシコシティは本当に危険?──6年間住んでわかった「危険になる条件」と、安全に過ごすための考え方
- kaoru1126
- 8月1日
- 読了時間: 15分
「メキシコシティって、超危険ですよね?」
メキシコシティで生活していると、この質問は本当によく聞かれます。
私はこれまで、観光案内だけでなく、日本企業の視察サポート、買い付け、著名人やインフルエンサーの撮影コーディネートなどを通して、多くの日本人旅行者やビジネス関係者をご案内してきました。
その経験から先に結論をお伝えすると、メキシコシティを街全体が常に危険な都市と考えるのは正確ではありません。
この街では毎日、大勢の人が仕事や学校へ行き、家族と買い物をし、レストランや公園で普通に過ごしています。
多くの旅行者も、何事もなく観光を楽しんで帰国します。
一方で、メキシコシティには、はっきりと危険になる条件があります。
場所だけでなく、時間帯、人の密集、デモ、大型イベント、その場での行動など、複数の条件が重なることで、普段は問題のない場所でもリスクが上がるのです。
この違いを理解しているかどうかで、旅行の安心感も、現地での生活も大きく変わります。
「危険な場所」だけでなく、「危険になる条件」がある

日本のメキシコ旅行情報では、
「このエリアは危険です」
「この地区は比較的安全です」
といった説明をよく目にします。
もちろん、避けた方がいい地域や、特定の時間帯に注意すべき場所はあります。
しかし、実際に住んで感じるのは、地名だけでは危険度を判断できないということです。
例えば、次のような条件があります。
人が密集している
大規模なイベントが開催されている
デモや政治集会が行われている
夜遅い時間帯である
混雑して自由に動けない
通行止めによって人の流れが一か所に集中している
スマートフォンや財布に注意が向いていない
周囲の変化に気付きにくい
こうした条件がいくつか重なると、普段は問題なく歩ける場所でも、スリや置き引き、注意をそらす窃盗などのリスクが高くなります。
ソカロやベジャス・アルテスも危険なエリアになりうる

メキシコシティ中心部にあるベジャス・アルテス(Palacio de Bellas Artes)は、メキシコを代表する観光スポットです。
美しい劇場や美術館があり、周辺には家族連れや旅行者も多く、普段は多くの人が問題なく街歩きを楽しんでいます。
しかし、同じ場所でも、次のような日には状況が変わります。
3月8日の国際女性デーをはじめとする大規模デモ
教員組合などによる抗議活動
政治集会
無料コンサートや大型イベント
祝祭日や連休中の極端な混雑
交通規制によって通常のルートが封鎖され、大量の人が狭い範囲へ集中することがあります。
デモの内容によっては、爆竹や発煙物が使われたり、一部で店舗や公共物が損壊されたりすることもあります。
騒乱が起きていなくても、人が集中するだけで、スリや置き引きには都合のよい環境が生まれます。
つまり、
昨日は安全だった場所が、今日は危険になりうる。
これが、メキシコシティの治安を考える上で重要なポイントです。
スマートフォンを盗まれた時、私は「暗い路地」にいなかった
私自身、メキシコシティでスマートフォンを盗まれたことがあります。
場所はソカロ周辺でした。
しかも、街灯のない暗い路地や、人通りの少ない裏道ではありません。
2024年4月20日、ソカロではニューヨークのロックバンド、Interpolによる無料コンサートが開催されました。メキシコシティ政府の発表では、約16万人が来場した大規模イベントです。
その日、妻と義姉が「近くでやっているなら、少し見に行こう」と言ったことがきっかけでした。
私たちは特に出演者の熱心なファンだったわけではありません。
近所で無料コンサートが開催されていたため、歩いて様子を見に行ったのです。
また、当時は母が約5年ぶりに日本からメキシコへ会いに来ており、家族で市内を回っていた時期でもありました。
会場周辺は、街灯やコンサート用の照明で明るく、大勢の人でにぎわっていました。
危険な暗がりという雰囲気ではありません。
問題が起きたのは、コンサート会場そのものではなく、会場付近の人混みを通り抜けようとした時でした。
周辺では複数の道路や通路が封鎖されており、目的地へ進むためには、人が集まっている場所を通らなければなりませんでした。
ただし、最初から一歩も動けないほど混雑していたわけではありません。
周囲の人とは近い距離でしたが、当初は人の流れに沿って普通に歩けていました。
ところが、ある地点で突然、人の流れが止まりました。
前にも進めない。
後ろにも下がれない。
なぜ止まっているのか分からないまま、周囲の人と密着した状態になりました。
しばらくすると、何事もなかったかのように人の流れが再開しました。
そして混雑を抜けた直後、私はポケットの感触がいつもと違うことに気付きました。
確認すると、スマートフォンだけがなくなっていました。
財布など、ほかの持ち物は残っていました。
誰が、どの瞬間に盗ったのかは見ていません。
ただ、以前、メキシコ国内の複数都市で暮らした経験のある友人から聞いていた、複数人で人の動きを止め、その混乱の中で所持品を抜き取る手口と非常によく似ていました。
こうした窃盗では、
一人が人の流れを止める
別の人物が身体を寄せる
その間に別の人物が所持品を抜き取る
といった役割分担が行われることがあると言われています。
私のケースが本当に同じ手口だったのかは断定できません。
しかし、突然動けなくなり、混雑を抜けた直後にスマートフォンだけが消えていたことから、私は複数人による窃盗だった可能性を疑っています。
なお、メキシコシティ政府はこのコンサート全体について「saldo blanco」、つまり重大な事故や治安上の大事件なく終了したと発表しています。 これはイベント全体の評価であり、個々のスリや盗難被害が一件もなかったことまで意味するものではありません。
この経験以降、私は暗い場所だけでなく、人が密集し、自分の意思で動けない状況を強く警戒するようになりました。
特に、人の流れが不自然に止まった時は、すぐにバッグのファスナーやスマートフォン、財布の位置を確認します。
ローマ・コンデサですら危険になりうる
ローマ(Roma)やコンデサ(Condesa)は、おしゃれなレストラン、カフェ、ギャラリー、ホテルが集まり、外国人居住者や観光客にも人気の高いエリアです。
メキシコシティの中では比較的高級な地域と考えられており、旅行者が滞在先として選ぶことも少なくありません。
そのため、
「ローマやコンデサなら絶対に安全」
と考える人もいます。
しかし、高級エリアであり、外国人や比較的購買力のある人が多く集まるからこそ、それを狙った窃盗や詐欺も起こります。
私自身は、ローマ・コンデサで次に紹介する手口の被害に遭ったことはありません。
一方、メキシコシティに住む外国人向けのFacebookコミュニティでは、同様の経験談が繰り返し共有されています。
代表的なのが、ケチャップ、マスタード、時にはシロップのような液体を使った注意そらしです。
典型的な流れは次のようなものです。
まず、犯人グループの一人が、被害者の服やバッグに液体を意図的に付けます。
その直後、別の人物が、
「服が汚れていますよ」
「拭きましょうか」
と親切そうに近づいてきます。
被害者の注意が服の汚れや、話しかけてきた人物へ向いている間に、別の人物が財布やスマートフォンを盗みます。
ここでも特徴的なのは、単独ではなく、複数人で動いている可能性があることです。
ローマやコンデサのように、比較的治安が良いとされるエリアでも、スリ、注意をそらす窃盗、Airbnbや賃貸をめぐるトラブルが起こらないわけではありません。
高級エリアだから危険がないのではなく、狙われる理由や手口が変わる。
そう考えた方が現実的です。

私が普段行っている防犯対策
メキシコに住み始めた頃と今では、防犯に対する考え方がかなり変わりました。
現在、私が普段から意識しているのは次のようなことです。
財布やスマートフォンをズボンの後ろポケットに入れない
財布をポケットに入れず、ファスナー付きのボディバッグを使う
ボディバッグは身体の前側に掛ける
混雑時はリュックを前に抱える
人混みの中でスマートフォンを不用意に操作し続けない
スマートフォンを見る時は、壁際や店舗内など安全に立ち止まれる場所へ移動する
人の流れが不自然に止まったら、すぐに所持品を確認する
大きなイベントやデモのルートを事前に調べる
混雑を避けられる迂回路があるなら、多少遠くてもそちらを選ぶ
どれも、特殊な防犯技術ではありません。
日本でも満員電車や花火大会、コンサート会場などで、貴重品を意識することはあると思います。
ただしメキシコシティでは、こうした対策を「念のため」ではなく、日常の習慣にしておく必要があります。
観光客だからこそ気を付けたいこと
日本人を含むアジア系の旅行者は、メキシコシティでは比較的目立つ存在です。
ただし、アジア系であることを隠す必要はありませんし、現地の人に見せかける必要もありません。
重要なのは、
旅行者らしい無防備な行動を減らすこと
です。
例えば、
道の真ん中で長時間地図を見る
財布を何度も出し入れする
周囲を見ずにスマートフォンを操作しながら歩く
貴重品が入ったバッグを開けたままにする
大量の現金を人前で数える
知らない人に話しかけられた瞬間、荷物から意識を外す
こうした行動は、国籍や人種に関係なく、周囲への注意が薄れている人として目立ちます。
道を確認する時は、コンビニやカフェ、もしくは道のど真ん中に佇まない。
支払い前に必要な金額を準備しておく。
誰かに話しかけられても、まず自分の荷物を確認する。
小さな行動の積み重ねで、リスクは下げられます。
Uberなどの配車サービスは便利。ただし現金払いの時は記録を残す
メキシコシティでの移動には、Uberなどの配車アプリが便利です。
私自身も日常的に利用しており、旅行者にも比較的使いやすい移動手段だと思います。
ただし、カード決済が通信障害などで利用できない場合や、何らかの理由で現金払いを選ぶ場合には、少し注意が必要です。
以前、母が約5年ぶりに日本からメキシコへ会いに来た時、私たちは一緒に市内を回っていました。
その際にUberを利用し、料金を現金で支払ったことがあります。
私はなぜかその時、念のため運転手へ現金を手渡す場面を動画で記録していました。
後になって、運転手側から「料金を受け取っていない」という趣旨の申告がされ、アプリ上で私が未払いであるかのような扱いになりました。
そこで私は、現金を手渡した時の動画をUberへ提出しました。
その結果、未払い扱いは解除されました。
すべての運転手がこのようなことをするわけではありませんし、Uberや現金払いそのものが危険という意味でもありません。
しかし、現金で支払う場合は、
支払う金額を運転手と確認する
手渡したことが分かる形で記録する
アプリ上で乗車が完了したことを確認する
車両情報や運転手情報を保存しておく
といった対策が役立つことがあります。
大きなチェーン店だから安心とは限らない
もう一つ、旅行者や買い付けをする人に伝えていることがあります。
それは、表示価格とレジ価格を必ず確認することです。
これは、屋台や観光客向けの小さな店だけの話ではありません。
以前、日本から来たお客様と一緒に、スーパーマーケットへテキーラを買いに行ったことがありました。
そのお客様から指定された商品を事前に調べたところ、訪問予定地域の近くにあるスーパーマーケットで取り扱われていました。
私は店へ行く前に、そのスーパーマーケットがオンラインで公開していたセール用のチラシを確認していました。
商品名、容量、仕様などを確認し、目的の商品が割引対象であることも確認していました。
店頭に到着してからも、念のため店内のプライスチェッカーへ商品を通しました。
そこでも、ウェブ上のチラシと同じ割引価格が表示されました。
私はお客様へ価格を報告する必要があったため、プライスチェッカーを通して価格を確認
つまり、
1. 事前にウェブ上のチラシで確認した
2. 商品が同一であることを確認した
3. 店頭のプライスチェッカーでも確認した(価格が変わるはずが無いという思いがあり、ここは撮影していない)
4. レジに通すと、オリジナルの価格が表示される
5.Webチラシと、さっきのプライスチェッカーの価格が同じなのに、レジでは価格が違うという主張 6.有耶無耶にされる
という状態でした。
ところが、レジで表示された価格は、事前に二度確認した金額とは大きく異なり、ほぼ倍近い金額になっていました。
私は、ウェブ上の情報と私が行った確認作業の話を店員して、価格が違うことを伝えました。
しかし、価格は訂正されず、納得できる説明も得られませんでした。
なぜ価格が変わったのかは、今でも分かりません。
単純なシステム上の問題だったのか。
割引の適用条件に、こちらが見落としていた何かがあったのか。
店側の運用上の問題だったのか。
あるいは、私たちが外国人客と見られたことが関係していたのか。
証明できない以上、理由を断定することはできません。
最終的には、お客様が「その金額でも購入する」と判断されたため、そのまま購入しました。
一本、二本であれば、差額は限定的です。
しかし、これが買い付けで十本、百本という数量になれば、単価の違いが大きな損失につながります。
価格表示、ウェブ上のチラシ、プライスチェッカー、レジ画面、レシート。
お金に関する情報は、その場で確認し、必要に応じて記録を残すことが重要です。
もちろん、これは私が経験した一例であり、すべてのスーパーマーケットで同じことが起きるという意味ではありません。
ただし、
大手チェーンだから、価格表示も会計も絶対に間違いない
とは思い込まない方がよいでしょう。



旅行と生活では、「危険」の種類が変わる
旅行者が現実的に注意すべきなのは、主に次のようなリスクです。
スリ
置き引き
注意をそらす窃盗
人混み
デモや大型イベント
支払い時のトラブル
表示価格と会計額の違い
しかし、現地で生活を始めると、警戒すべきものが変わります。
例えば、
近隣住民との関係
住居やサービスの契約
行政手続き
修理業者や委託先とのトラブル
約束と実際の作業内容の違い
問題が起きた後の相談先や証拠の残し方
など、観光中には見えにくい問題が増えてきます。
身分証明書を確認した。
氏名や連絡先を控えた。
契約書がある。
相手が会社や店舗を持っている。
こうした情報はもちろん重要です。
しかし、問題が起きた時に、確認した身元情報だけですぐ解決するとは限りません。
私自身、警察・検察に相当するFiscalíaや法律関係者と接する経験を通じて、制度が存在することと、実際の問題が迅速に解決することは別だと感じています。
これは法律制度全体を一つの経験だけで評価するという意味ではありません。
ただ、私個人の経験としては、問題が起きてから相手を追及するより、問題が起きる前に証拠、記録、支払い条件、責任範囲を残しておく方がはるかに重要だと考えるようになりました。
さらに、メキシコでビジネスを始めると、また別の世界があります。
現地で会社や店舗を経営する人、従業員を雇う人、資産や商品を持つ人が直面するリスクは、旅行者のそれとは大きく異なります。
私は買い付け、制作、現地調整などの仕事を通じて、メキシコで事業を営む経営者の方々から、取引先の信用確認、契約、従業員、行政、近隣関係など、旅行中にはまず見えない苦労やトラブルを聞く機会があります。
持っているものや守るべき事業が増えるほど、安全や信用をめぐる問題は複雑になります。
このテーマは旅行者向けの治安情報とは性質が異なるため、別の記事で詳しく扱います。
この記事の要点
メキシコシティの危険度は、エリア名だけでは判断できない
時間帯、人の密集、デモ、大型イベントなどによって状況は変化する
明るい観光地でも、自由に動けないほど密集すると窃盗のリスクが高まる
人の流れが不自然に止まった時は、すぐに所持品を確認する
スリや注意そらしは、複数人で行われる場合がある
比較的高級なローマ・コンデサでも、窃盗や詐欺が起こらないわけではない
旅行者らしい無防備な行動を減らすことが重要
Uberを現金で利用する場合は、支払い記録が役立つことがある
表示価格、レジ価格、レシートなどはその場で確認する
居住やビジネスでは、旅行とは別のリスクが生じる
問題発生後の対応だけでなく、事前の記録と証拠づくりが重要である
結論──危険を知ることは、不安になることではない
メキシコシティは、世界有数の文化都市です。
歴史、美食、建築、アート、音楽、そしてビジネス。
この街には、多くの魅力があります。
一方で、日本とは違うリスクが存在することも事実です。
だから私は、
危険だから行かない
ではなく、
危険になる条件を知ってから行く
という考え方をおすすめしています。
危険を知ることは、必要以上に不安になることではありません。
むしろ、何に注意すべきか分からないまま怖がるよりも、具体的な条件と対策を理解した方が、落ち着いて行動できます。
私自身、6年以上メキシコシティで生活してきましたが、今でも「危険な場所の一覧」だけを頼りにしているわけではありません。
その日、何が行われているのか。
どのくらい人が集まっているのか。
自分が自由に動ける状況なのか。
周囲に注意を向けられているのか。
価格や支払いに違和感がないか。
そして、後から確認できる記録が残っているか。
そうした条件を見ながら行動しています。
それが、この街を必要以上に恐れず、同時に油断もせずに楽しむための、最も現実的な方法だと思っています。


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